本のすすめ 時々ひとりごと

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 フィリパ・ピアス『トムは真夜中の庭で』 岩波少年文庫

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 この「本のすすめ」は、いつだって、「とにかく読んでみて!」と思っている本ばかり紹介しています。だけど、今回は特にその思いが強く、声を大にして言います。
「まだ読んでない方は、今すぐに読みはじめてください」

 すっかり大人になってから、私はこの本に出会いました。裏には、「小学5・6年生以上」って書いてあります。子どもの頃に読んだら、また違った感じを受けたのかもしれません。
 今なら、どうしても、大人の目線で読んでしまいます。登場人物の中でも、自然と大人に気持ちを合わせていきます。でも、子どもだったら、主人公の少年の気持ちになったことでしょう。

 でも、この本がすごいのは、大人の立場で読んでも、心を底の方から揺さぶられることです。
 今生きている私たちにとって、時間がたつというのはどういうことなのか。そのことに迫っていく物語です。ですから、子どもよりも大人の方が、切実に「時」というものを感じます。
 時がたつと、得るものもあります。成長もします。失うものもあります。でも、決して、時がたつのは残念なことではありません。今を生きていることは、嬉しいことです。

 自分のこれまでを振り返ってみると、後悔はいっぱいあります。最大のものは、ちゃんとお金を稼ぐことを考えてこなかったということです。そのせいで苦労続きで、現在も大変です。7人の子どもたちも不満だらけです。今日も昼ご飯代をくれと言われ、ひと騒動ありました。
 それでも時はたっていきます。
 本当は、巻き戻してやり直したいんですけど、無理です。
 だけど、それでも、やっぱり、今こうして生きていて、なんとかやっていることは、すごく嬉しいことなんだと、この本に支えられてきました。

 この物語には、最後にアッと驚く結末が待っています。驚かされるんですけど、この着地点しかない。完璧な構成です。
 面白いストーリーを楽しんでいたのに、いつの間にか、すごいところに連れて行かれてしまいます。20世紀の児童文学の最高傑作の一つです。

 フィリパ・ピアス『トムは真夜中の庭で』は、「年をとっていくことに不安を感じている」あなたのための本です。
 トムと一緒に、真夜中の庭に行きましょう。年齢を重ねることも、悪くないな。生きていくって楽しいな。そんなふうに自然と思わされます。

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