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『魔術師のおい』光文社古典新訳文庫

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C.S.ルイス著、土屋京子訳『魔術師のおい』光文社古典新訳文庫、をご紹介します。特に、「新訳と旧訳どっちを読んだらいいのと迷っている」あなたのために、読みくらべてみます。

 結論から言いますと、新訳をおすすめします。 

 ナルニア国シリーズは、児童文学界の巨人、瀬田貞二訳で長らく親しまれてきました。

 名作ということはよく知っていました。
 ところがなぜか、第1巻『ライオンと魔女』で挫折していました。多分、一度目は小学生の時に読みました。でも2巻目に進まなかったのです。
 なんとなくこれではいけないと思い、大人になってからもう一度読みました。子どもが読んでいたのを貸してもらったのです。でも、やっぱり1巻止まりでした。

 そこで得た結論。
 異世界もののファンタジーはどうも苦手だ。

 それっきりになっていました。
 でも、古典新訳文庫に入ったのを機会に気になって、買ってありました。それをふと、読んでみようと思ったのは、恩田陸『日曜日は青い蜥蜴』で、ナルニア国シリーズが絶賛されていたからでした。
 しかも、こちらは1巻目が『ライオンと魔女』ではなく、『魔術師のおい』だったのが良かったのです。三度目チャレンジは結構気が重いものでしたが、全く知らない物語からなら取りかかれそうでした。

 岩波版は発表順であるが、光文社版は作品の中の時系列順。著者は後者の順番で読まれるよう希望していたとのこと。

 その結果どうだったか。
 面白かった。
 瀬田訳を図書館で借りてきて比べてみたら、ひとつ理由がわかりました。

瀬田訳の書き出し
「この物語は、ずっとむかし、みなさんのおじいさんがまだ子どもだったころのお話です。」

土屋の書き出し
「これは、はるか昔、読者諸君のおじいさんが少年だった時代に起こった、とても重要な物語である」

 文体が違ったのが、まず、しっくりきました。
 もちろん、初訳が1966年の岩波版と、2016年の光文社版では、実に50年の違いがあるので、言葉遣いの新旧もあります。ただ、それよりも、「ですます」と「である」の違いは、私には大きかったです。

 そのおかげで、児童文学という感じは薄れ、普通に小説として読め、それだけ、戦争の終わった時代に、著者が子どもたちに届けようとした熱い想いがよく伝わってきました。

 面白くて熱い。
 最高です。

C.S.ルイス著、土屋京子訳『魔術師のおい』は、「ナルニア国物シリーズに入っていけなかった」あなたのための本です。

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