本のすすめ 時々ひとりごと

横松心平オフィシャルブログ

Book Mystery

アーナルデュル・インドリダソン『湖の男』柳沢由実子訳、創元推理文庫

投稿日:

 優れた小説って、一生忘れられないワンシーンがある小説です。『ハックルベリー・フィンの冒険』の名セリフ、『赤毛のアン』でマシューとアンの畑でのあのシーン。思い出しますよね。
 ミステリーだと謎が解けたときのシーンであることが多いのですが、この『湖の男』の忘れられないワンシーンは、本の半ばに突然やってきます。切ない、あまりにも切ない、物語の核となる場面です。そのワンシーンが物語全体を引っ張っていきます。
 読めば、それがどこなのか、絶対にわかります。

 さて、ここで問題です。
 アイスランドの首都、知ってますか?
 レイキャヴィクです。
 レイキャヴィクの警察官を主人公とする、北欧ミステリーのシリーズ4作目。原書は15冊出ているんですけど、翻訳は4冊目。

 アイスランド北海道よりも面積は少し広いくらいで、人口は35万人ほどなんです。
 この国では行方不明でいることが簡単なことではない、みたいな記述があって、はじめは意味がよくわからなかったのですが、そもそも人が少ないのでした。
 でも、この本の中に確かに生きている人たちを知ると、アイスランドという未知の国が、グッと身近なものになりました。ちっともかっこよくないけど、地道に生きている主人公のエーレンデュルが初めて会ったアイスランド人です。
 いつか行ってみたいです。

 湖の底から発見された白骨の死体は誰なのか、という謎を警察が追っかけるっていう話です。
 だけど、謎解きパズルのような小説では全然なくて、東西冷戦時代のヨーロッパのまっただなかで生きていた若者たちの姿が、じっくりと描かれます。共産主義の監視社会の恐怖がひしひしと伝わってきます。

 でも、一番、心に残るのは、犯人が誰だったかということよりも、愛する者同士のエピソードです。

アーナルデュル・インドリダソン『湖の男』は、「忘れることのできない切ないワンシーンに出会いたい」あなたのための本です。

-Book, Mystery

Copyright© 横松心平オフィシャルブログ , 2021 All Rights Reserved Powered by STINGER.