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ロバート・A・ハインライン『夏への扉 新訳版』小尾芙佐訳 早川書房

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 未来について書くSFって、世界の破滅を描くこともあれば、素晴らしい未来を描くこともあります。
 この『夏への扉 新訳版』は、未来は今よりも良いものになるはずと思わせてくれる、前向きSFの代表作です。
 極めつきは、有名な最後の一行。そのラストはタイトルにつながっていき、最高に爽やかな読後感を醸し出します。

 作品が発表されたのは1956年。
 物語の舞台は1970年。
 それからその30年後の未来である2000年。

 そうです。今や、その「未来」も2020年現在から見ると、すっかり過去になっているんです。

 私が初めて読んだのは、1987年ごろです。旧訳のハヤカワ文庫版です。あんまり面白くて感動的で、10代の頃のベスト1小説でした。その頃でもまだ、2000年は未来でした。
 1992年ごろに読み直したときは、初読の時の感動はありませんでした。あれっ、こんなだったかなと思いました。

 今回、3回目でした。
 2009年に出た新訳で読んでみました。
 非常に感銘を受けました。

 感動した理由は三つあります。

 第一に、時代。1992年時点における2000年という未来設定は、中途半端なものでした。それならいっそ、2000年が過去になってしまった今の方が、物語全部を過去として読めて、それでもなお未来を信じる物語、としてより強く受けとめられたのです。

 第二に、自分の年齢。10代の頃に考える未来ももちろん素敵です。でも、50近くなってもなお、未来は良いものと信じることができたなら、そのメッセージはいっそう迫ってきます。

 第三に、新訳。2000年を過ぎた後での翻訳なので、当然、現代的に訳されています。つまり、今読んでも違和感のないように、「現実には過去となってしまった、2000年という未来」を意識した言葉が慎重に選ばれているのです。

 今だからこその新訳をおすすめします。
 まだ読んでいない人は、うらやましいです。そして、絶対に読んでください。

 
ロバート・A・ハインライン『夏への扉 新訳版』は、「未来に希望を持ちたい」あなたのための本です。

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