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ジョージ・ソーンダーズ『十二月の十日』 河出書房新社

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 岸本佐知子さんが翻訳しているんですけど、ちょっと、他の人の翻訳は考えられないほど、ぴったりなんです。というのも、岸本さんは翻訳家ですが、やたら面白いエッセイも書く人なんです。皮肉たっぷりの笑える作風なんですけど、この『十二月の十日』もまさしくそんな、短編小説集です。
 
 なかでも、行っちゃってるというか、かなりヤバイのが「センプリカ・ガール日記」というお話です。
 持ってると、ステイタスになるようなものってありますよね。ちょっと庶民には手が届かないようなもので、それを持ってる人は、成功した人なんだなってすぐにわかるようなものです。
 「SG飾り」っていうものがこのお話の中に出てきて、日記を書いてる中年のサラリーマンおじさんは、それが欲しくて欲しくてたまらないんです。だけど、「SG飾り」がなんなのか、はじめは読者にはわからないんです。
 アメリカにはそんなものがあるのかなー、くらいに思って読み進めていくと、うわっと、その正体が明かされます。おじさんがスクラッチくじに当たって、それを手に入れるんですけど、まあそれがひどいっていうか、、、種明かしはしませんけど。
 「SG飾り」を手に入れたそのあとのドタバタはおかしくて笑っちゃうんですけど、とにかく、変な話です。作家という人は、こんな風に想像力を駆使しちゃうんだなあって、驚かされます。ちょっと変すぎです。
 でも、普通の人が考えないようなことが表現されているからこそ、破壊力のある面白さが感じられるのでしょう。

 そして、この他にも、変さ加減の違う、おかしな話がいくつも収録されているんです。だけど、変な世界の中で右往左往するどうしようもない人たちが、愛おしく思えてきます。
 「ソーンダーズ・ワールド」へトリップすると、現実の世界も、これまでとは違った風に見えてくるでしょう。そして、妙なことに、生きて行くって悪くないよな、っていう気がしてきます。

 ジョージ・ソーンダーズ『十二月の十日』は、「笑いながら変な世界を体験したい」あなたのための本です。

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