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Book Mystery

逢坂剛『鏡影劇場』新潮社

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 ホフマンという、ドイツの芸術家を知っていますか?
 1776年に生まれ、1822年に、脊椎カリエスにより46歳で亡くなってしまった、18世紀から19世紀にかけての人物です。
 作家であり、作曲家であり、評論家であり、画家であり、しかも法律家として働いていたというのですから、天才ですね。

 チャイコフスキーのバレエに「くるみ割り人形」があります。その原作となった「くるみ割り人形とねずみの王様」を書いてます。また、夏目漱石の「吾輩は猫である」にヒントを与えたと言われる、猫を主人公とした長編小説「牡猫ムルの人生観」の作者でもあります。

 また、作曲家としてはオペラなどを残し、評論家としては、同時代のベートーベンの交響曲を分析し、絶賛しています。当時、ベートーベンがまだそれほど評価されていなかった中で、その素晴らしさを見出した、本物の耳の持ちだったわけです。

 バルザック、デュマ、ドストエフスキー、モーパッサン、エドガー・アラン・ポーなどの作家たちに影響を与えています。作風としては、江戸川乱歩とも共通点があります。
 つまり、エドガー・アラン・ポー、江戸川乱歩の源流とも言え、そうすると、ミステリーの始まりあたりにいる人ということになるわけです。

 それだけ後世に大きな影響を与えた、高いオリジナリティを持った作品を残した作家です。

 そんなホフマンについて、その行動をつぶさに身近な人が観察して記録して、報告しているという謎の古文書が、スペインの古本屋で発見された、というところからこの小説は始まります。それを日本に持ち帰り、翻訳・解読していき、ホフマンの姿が蘇っていきます。
 誰が、何のために書いた文書なのか。その結末は、袋とじの中に収められています。
 
 特に、ドイツ文学に興味がなかったのに、ワクワクドキドキさせられてしまいました。文学について語りながら、めちゃめちゃ面白い、エンターテイメント小説となっています。本年77歳になった大ベテラン作家、渾身の大長編です。

 五木寛之が78歳の年に『親鸞』を出したとき、長年ずっと、親鸞について調べ続けてきたのだと語っていました。同様に、逢坂剛も若い頃からずっと、ホフマンについて調べてきたのだそうです。
 
逢坂剛『鏡影劇場』は、「結末が袋とじに隠されたミステリーを楽しみたい」あなたのための本です。

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