本のすすめ 時々ひとりごと

横松心平オフィシャルブログ

Book essay

森田真生『数学の贈り物』ミシマ社

更新日:

 読んでいて惚れ惚れとする、見事な文章が書かれたエッセイ集です。文を書く技術が素晴らしい、ということだけではありません。
 著者が自分の肉体を使って考え抜いた、オリジナルな思考が表現されています。どこかで読んだことのあるようなこと、誰かが言ったようなことは、この本には書かれていません。潔いほど、自分の考えにこだわっています。
 オリジナルな思考が、みずみずしい日本語に乗せられているので、読めば読むほど、心が解きほぐされていきます。

 息子との公園散歩のこと、自宅の大掃除のこと。話の入り口は身近なもの。そんな身辺雑記の中に、道元禅師、ユークリッド、プラトンなどの思想家の言葉が自然と出てきて、思考は展開していきます。最後は余韻を持って見事に着地します。そっと読者に差し出された言葉に、ハッとさせられます。

 森田さんは「独立研究者」です。数学の研究をしている方なので、つまりは「フリーの数学者」です。そんな人がいるのは、極めて珍しいことです。
 普通、数学者というのは、大学なんかの組織に勤めています。例えば学生の授業を受け持ったりしながら、自分の研究をしています。それは、数学の研究をしていても、フリーでは食べていけないからです。
 でも著者は、組織に属さず自分で研究をしながら、国内外で「数学の演奏会」や「数学ブックトーク」など、ライブ活動を行っています。

 組織の一員としてではなく、あくまでも個人として考えたことを、自由に書いたり話したりする。そういうことのできるフリーランスの研究者なのです。
 だからこそ、のびのびとした自由な考えを紡ぎ出すことができるのでしょう。

森田真生『数学の贈り物』は、「名文を読みたい」あなたのための本です。

-Book, essay

Copyright© 横松心平オフィシャルブログ , 2021 All Rights Reserved Powered by STINGER.